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2014年12月号

太古の森から台所へ〜ゴキブリ3億年旅行記〜

2014年12月10日 15:50 by eiichi_tanoue
2014年12月10日 15:50 by eiichi_tanoue

 今年もいよいよ年の瀬。というわけで、今回は特別編として昆虫のことをより好きになってほしいという思いからゴキブリの特集をしたいと思います。お許しください(笑)


 と言うのは、何と言ってもゴキブリ嫌いが多数派であり、ゴキブリ保護運動など起こりようがないからです。つまり、いてほしくない(本当はそんな動物はいないが)生き物の最右翼なのです。


 しかし、これほど誤解されている昆虫もそうはいません。そもそも悪さなどしてはいないのですから。確かに小児マヒウイルスの媒介者として問題になったり、ゴミの上を歩いたまま平気で台所に上がってきたりするので、汚らしい印象を覚えてしまいます。でも、そのゴミを出したのは誰でしょう?それは私たち人間の生活から生まれてきたものです。小児マヒウイルスだって保菌者はヒトそのものです。


 でも、なぜか嫌われる。要するに人間と"相性が悪い”のでしょう。いわゆる、お母さんの「キャア反応」です。お母さんが台所でゴキブリと出会いキャアと悲鳴をあげ、子どもも一緒になって騒ぐ。これによりゴキブリの評価が代々受け継がれていくのです。だが、なぜ最初のお母さんはキャアと騒いだのか。このキャア反応解釈は興味深いです。ゴキブリに限らず、親の認識が子どもに先入概念を植え付けていくことは他にも多々あるのですが。


 まぁ、それは置いといて、ゴキブリが嫌われるところは"したたかさ”ではないでしょうか。退治したと思ったらまた居る。一匹いたら百匹は居る。しまいには、倒したと思ってものろのろと歩き出す生命力の強さ。そんなしたたかな姿が人間の癇にさわるのではないでしょうか。色合いも地味で、きれいな声で鳴くわけでもなく、フォルムもどこか気持ち悪い。要するに可愛げの無い奴なのです。


 しかし、それは仕方の無いことで、むしろそれ故に今日まで生き続けてきたとも言えます。この昆虫の歴史は古く、さかのぼること三億年前、中生代中期には地球上で生活していました。人類の始まり、アウストラロピテクスを三百万年前とするならば、実にその百倍なのです。しかも、ゴキブリは化石で発見されるそれと形態的な観点から言えば、さほど違いがないのです。形が似ているということは、行動も大きな違いはないと推測され、三億年の間、大きな変化もせずに生き続けたことになります。


 これを単に原始的な奴だと判断するのは早計で、もともとの体の設計が優れていた、だから大きなモデルチェンジもなく済んだことを意味します。そうすると、どうもこの設計は高温多湿な古代のジャングルの中で生き抜くことに適していたようです。


 今日よりはるかに大規模な当時の熱帯雨林のなかで小さな昆虫が定着する。そこにどんな方法が考えられるでしょうか。翅を広げて飛ぶとするなら、大きいほど翅は湿り気を帯び、飛びにくかったでしょう。事実、この時代には体長が80センチに及ぶ巨大なトンボ(メガニウラ)がいたらしいですが、絶滅しました。"大き過ぎる”翅が災いしたのです。そこで、ゴキブリは飛び回るのではなく、地表を這い回るのを選びました。でも地表も、倒木や落葉といった障害物が存在しているので平和とは割り切れない。そこで扁平な体を維持することになったわけです。脚は太くするより細長く、仮に一本が折れるようなことがあっても差し障りの無いようにする。ゴキブリの親類であるバッタは後脚を著しく発達させ長距離"跳ぶ”ことを可能にしましたが、左右どちらかの脚が取れようものなら、一気に運動性を落としてしまいます。


 ゴキブリは飛びも跳びもしない代わりに、走るということにかけては素晴らしい能力を獲得しました。湿気に対しては、油分を体表に分泌することで防ぎました。逆に乾燥がひどいときには体内の状況を一定に保つことができます。体が茶色いのも、大気がまだ薄く、紫外線の影響が強かった当時、体への悪影響を防ぐ意味もあったのでしょう。ちょうど、ビール瓶が茶色で、中身の変質を防いでいるのと同じ原理です。

 

 食べ物は森の中にいくらでもあります。動物の死骸や落葉、倒木いずれも有機物だから消化する方法さえあれば食物には困りません。わざわざ齧りとるようなことをせず、咬みながら溶かしていけば良いという考えから大きな顎を持つ必要もありません。環境が悪化すれば木の隙間など狭いところに潜り込めばいい。仲間が同じ場所に集まれば配偶の相手も容易に見つかり、不完全変態だから子どもも同じような生活をするため、改めて産卵場所を見つける必要もありません。

 

 このような素晴らしい原設計に忠実に、ゴキブリ達は地球環境が大きく変化しようとも、上手く適応しながら生き続けてきました。おそらく氷河期のような大きな変化が訪れた時でも、影響の小さなどこかに潜り込んで耐えていたのでしょう。野生である彼らが人間の生活に密着するようになったのは、人間が森林を開発して家を建てたからです。そんな家の中で台所は高温多湿で食物もあり、水まで存在する。まさにゴキブリの設計に適合した場所なのです!家には潜り込める場所も多く、そのような理由から彼らはここに故郷を見出したのでしょう。


 余談ですが、ゴキブリの名前の由来は「御器かぶり」だという説があります。かぶりとは「齧る」と言う意味で、木製の器を齧る嫌な奴というイメージが当時からあったのでしょう。今も昔も、そんな台所にあらわれた彼らが、母の「キャア反応」を生み出し続けているのです。

 

 

 

PS.最近、こんなゴキブリが海外で発見されたそうです。

 

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