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介助犬訓練士 山中彩紗子さんにインタビューしてみた。

2015年02月09日 17:41 by masataka_mano
2015年02月09日 17:41 by masataka_mano

 熊本県では唯一。全国規模で見ても数少ない介助犬訓練士が熊本県宇土市にいると聞きNPO法人 介助犬協会キスメット(以下キスメット)所属訓練士 山中 彩紗子(やまなか あさこ)さんにお話を聞きに行ってきました。介助犬とはよく耳にしますがまだ見かけたことがありません。一体どんな犬なのでしょうか?そしてそんな介助犬を訓練する介助犬訓練士とは??

介助犬訓練士 山中 彩紗子さん


---介助犬って最近たまに耳にしますが、見たことってないんですよ

介助犬協会自体が熊本県ではキスメットしかありません。介助犬の頭数自体全国で約70頭しかいないですから目にすることは少ないかもしれませんね。人の手助けをすることで有名な盲導犬は約1,000頭が日本で活躍しています。

 

---介助犬はまだまだ少ないんですね。そもそも介助犬とはどう言ったお仕事をする犬たちのことをいうのでしょうか

よく、介助犬と盲導犬を混同して考えられている方がいますが、介助犬は主に体の不自由な方の生活をお手伝いする犬たちのことを言います。主な仕事としては冷蔵庫のドアを開けたり落とした携帯電話を拾ったり盲導犬の大きな違いは物を拾って持ってくる動作があるかないかでしょうか。

現在、山中さんが訓練しているラブラドールレトリーバーの「ハル」介助犬と認定されれば熊本県では初となる。 


---ということは、かなり生活に密着したお仕事を彼らはやっているわけですね。そんな彼らですが、警察犬には指定犬種がいたりすると聞きます。介助犬には指定犬種または向いている犬種などはいるのでしょうか

指定犬種というのはいないのですが、向いている犬種はゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーが向いていると言われています。

 

---レトリーバーですか

どうしてもユーザーの方を支える場面なども多く、ある程度の体格で力がある犬種が向いているんです。その他にも人のたくさんいる街中での仕事も多くあり、あまり威圧感のない外見の犬種が好まれて使われているようです。シェパードも向いているのですが、やはり怖がられることも多いようです。そういうことからレトリーバー系の犬が好まれています。が、なんといっても1番は訓練ですね。

 

---特に指定はないとのことですが、日本国内にはレトリーバー系以外の介助犬もいるんですか

そうですね。中には小型犬の介助犬もいます。しかし、体が小さく中・大型犬より力もないため8〜9割は大型犬が使われていますね。

 

---その他に求められる条件などはありますか

何と言っても人が好きなことですね。訓練を喜んでやれるかどうかも重要です。あと、外の刺激に耐えられるかですね。音や他の動物とかに過剰に反応しないかも求められます。いろんな環境で仕事をするので環境に左右されないようにしてもらわねばなりません。

 

---外で活動するには様々なものが求められるんですね。ふと気になったんですが、介助犬って落としたスプーンを拾ったりするのをイメージするんですが、あれって全て自身の判断で行動するんですか?

また、盲導犬の話に戻るんですが、「利口な不服従」というものがあります。普段、盲導犬はユーザーの指示や行動に沿って動くんですが、例えば赤信号の横断歩道。ユーザーは気づかずに渡ろうとします。でも、盲導犬はその指示には従わずユーザーの足を止めさせます。臨機応変に安全を確保するわけですね。介助犬もそういった特殊な状況を除きユーザーの指示に従うのが一般的です。なんでも落としたものを拾って持ってくるわけではないんです。場合によっては犬に有害なものだったら危ないので基本はユーザーの指示に従うことになります。

 

---てっきり、なんでもすぐに飛んで持ってきてくれるものと思ってました。ちなみに、介助犬に認定基準などはあるのでしょうか

これは、団体によって違います。他団体や盲導犬協会などは1歳になるまで一般家庭に(パピーウォーカー)預けその後引き取って適性を見て訓練を開始する場合もあります。キスメットではパピーウォーカーなどは使わず子犬の頃からこちらで育て上げ介助犬にするという流れです。

介助犬次期候補生たち 


---介助犬1頭育て上げるにもいろいろな苦労があるんですね。そういった介助犬訓練士になるためには何か資格などはあるのでしょうか

「介助犬訓練士」というような国家資格などがあるわけではありません。各協会に訓練士募集や訓練士になりたいと依頼があれば各協会での違いはありますが1〜2年ほど研修を行いその協会の訓練士になるということがほとんどです。研修となると住み込みで大変な仕事になることがほとんどなのでけっこう挫折する方も多いです。

 

——-動物のお仕事は大変ですね。訓練も毎日大変かとは思いますが日頃どのような内容の訓練を行っているのでしょうか

基本的な訓練ももちろん行いますが、介助犬としての訓練はバス会社様や大型ショッピングセンター様・飲食店様のご協力のもと営業中に来店し車椅子などに乗っての実地訓練を定期的に行っています。

 

 

---公共の場所での訓練ももちろん必要になってくるわけですね。過去にそういった場所でのトラブルや問題点などはなかったのでしょうか

トラブルなどは今の所報告がないと伺っています。お店もお客様もみなさん協力的で助かっています。しかし、中には過去に断られたり。協力はしてくれるものの、いまいち実地訓練の内容が伝わっておらずあまり訓練としての意味をなさない場所を提供されたこともあります。

 

---みんながみんな快く協力してくれるわけではないでしょうし、やはりお店や施設の特性上提供しにくい場所もありますからね。

あとは、受け入れ態勢の問題もあります。最近お店の入り口に「介助犬・ほじょ犬入店可」のステッカーを貼っているお店は多いと思います。それ自体は介助犬にとって仕事のしやすい社会になってきたのかなとは思います。ただ、その前の段階。訓練犬はペットとしての扱いとなるため入店ができないことが多いです。介助犬になったら入店できるのに介助犬になるための訓練をする環境が少ないのが1番の問題点かなと思います。訓練犬の段階はお店側のご厚意がないと十分な訓練が行えないのが現状です。

 

---練習の環境がないとプロにはなれないですね。それは確かに大問題ですね。山中さんはそういった難しいお仕事になぜ就こうと思ったのでしょうか

元々小さい時から動物全般が好きで、動物関係の仕事に就きたいという夢は持っていました。そこで、一番のきっかけは以前自分の家で飼っていた犬ですね。少し問題のある子で、家族みんな噛まれました(汗)元々里親募集で家にきた子なのですが小学生だった自分はしつけの本を買ってきてしつけてみたんです。そしたらすごくうまくいって!そこから犬の訓練に興味を持ちました。そのあとの学生生活でも総合学習の時間などは自分なりに盲導犬などのことを調べたりして動物専門学校へ進学したんです。そこで、出会ったのがキスメットの代表だったんです。そこでスカウトされて代表の訓練所に住み込みで働いて現在は独立しました。

 

---あっ、介助犬訓練士以外にもお仕事を持ってらっしゃるんですね

はい、キスメットとは別に家庭犬訓練士をしながら介助犬訓練士をしています。代表の訓練所で働きだして1年後位に介助犬育成を考えているといわれそこに訓練士として参加させてもらったという形ですね。

 

---ということは、介助犬訓練士になりたい!って始めたわけじゃなくてキスメット代表にスカウトされた形になるんですかね

そうですね、「盲導犬はたくさんいるけど介助犬はいないから一緒にやってみないか?」と言われそこから興味を持ち出して「よし!私が頑張ってみよう!!」って思ってそこから介助犬に気持ちが切り替わったんです。もちろん家庭犬訓練士も同じくらいの情熱がありますが、介助犬への情熱もなかなかのものです。

 

---介助犬・家庭犬訓練士は大変かとは思いますが頑張って下さい。今日はどうもありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

 

 人助けをする犬といえば盲導犬が有名ですが最近耳にする機会の多くなった介助犬。しかし、社会の介助犬や介助犬訓練犬を迎え入れる体制はまだ十分ではありません。介助犬なしでは十分な生活を送れない方も多くいます。そんな介助犬の能力を十分に発揮するためには日々の訓練や人との信頼関係が重要になってきます。そんな彼らをもし見かけたら遠くからそっと見守ってあげてください。

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