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ぺっとの根っこ

2015年12月号

猟師 牧裕晶さんにインタビューしてみた。

2015年12月15日 18:42 by masataka_mano
2015年12月15日 18:42 by masataka_mano

【今回の記事には野生動物の殺傷画像が含まれます。苦手な方や嫌悪感を感じられる方は引き返してください。】 

 日本全国で猪や鹿による獣害被害が深刻化している。対抗する猟師も高齢化が進み若手の猟師の確保が現在急務と言われている。そんな状況の中若手猟師として奮闘している糸島市在住の猟師 牧裕晶さんにインタビューしてきました。

猟師の牧裕晶さんと相棒のふじ

朝6時前牧さん宅到着。辺りはまだ暗い。

---おはようございます!ずいぶん朝はやくから行動開始するんですね。

おはようございます。遠いところご苦労様です。今日は少し離れた場所で猟をするので早めに行動しますよ。

---それでは色々お話をお聞かせください。牧さんまず最初になんで猟師になろうと思ったんですか

元々父が猟師で父が猟に行く時はよく着いて行ってました。その時はまさか自分が猟師になろうとは思ってもいませんでしたよ。色々めんどくさいことも見てきましたし。でも、僕は料理がすごく好きで父が獲ってくる猪や鹿を食べるのが好きでした。そんな父も年齢を重ねて銃を置いてしまうともうあの美味しい肉を食べることができない!そう思い猟師になることを決意しました。

---食が猟師への道を切り開くきっかけだったんですね。

そのような環境で育ったので食に関して強い関心を持つようになりました。現在、私は加工食品メーカーに勤めていますが、職業として食品に携わる職種を選んだのもそのような理由からです。また、狩猟を始めた理由の一つとして「自分の食に関しても責任を持ちたかった」という事もあります。

---と、いうことは普段獲る獲物としてはやはり猪と鹿ですか

今日一緒に行くこの犬を使う猟ではそうですね。今日は愛犬のふじ(1枚目写真)1歳9ヶ月と猟師仲間の2頭(3枚目写真)を加えた3頭で猟を行います。あと、実家に鳥猟犬のポインターとブリタニースパニエルがいるのでその子たちと猟に行く時はキジ・カモ・ヤマドリなどを狙います。

実際の猟で猟犬を使う場面は多い。

 ---犬を使う猟をされるということは犬の訓練も相当大変じゃないですか

もちろん、犬を引き綱のない状態で使役しますから呼び戻し訓練は基本です。山の中でコントロールが効かなければ話になりませんから。たまにニュースで猟犬による事故や事件を耳にしますがそういったことも日頃の訓練や他の動物と触れ合わせることで攻撃していい相手かそうでない相手か判断させることができます。事故を起こしていては大きな問題になりますから。そのため日頃のコミュニケーションや愛情を持って可愛がる事が何より大切なことだと思います。

---確かに事故を起こしていては大変ですね。有害鳥獣駆除など猟期の猟とは別にどんな活動をされるのでしょうか

主に有害鳥獣駆除に週に一回くらいで出動しています。依頼内容としてはカラスやアナグマやドバトが多いですね。冬になるとヒヨドリなんかも。

---意外と鳥が多いんですね。

あと、射撃場での射撃練習は欠かせません。安全な猟銃の扱いを心がけるためにも月例の練習会や銃砲店の練習会もあるので極力顔を出すようにしてます。実際の狩猟の場では矢先(弾の飛ぶ方向)にも気を使います。流れ弾での事故は絶対に起こしてはいけません。それを防ぐために発砲する際はバックストップ(矢先に銃弾を受け止める丘や地面)があるところでないと発砲はしません。とにかく銃口がどこを向いているか意識することが大事ですね。

---猟師に必要な銃の扱いは非常に慎重にしなきゃいけないんですね。ちなみに猟師必需品って何があるんですか

行う狩猟の種類でも変わってきますが今日のような大物猟の場合は持ち歩いてるものだけで銃・弾・ナイフ・無線機・山を歩くようの足袋や長靴・誤射防止のオレンジ色のベストと帽子・獲物を引っ張るようのロープ・犬を引くようの引き綱・救急用具・犬笛といった感じですね。

---・・・多いですね。

多いです。何があっても対応できるように必要最低限なものは持っておきます。

---道具ももちろんですが猟には知識や感も重要になってくるんですか

もちろんです。地形や習性をしっかり把握しないと犬を使っているからとはいえその猟は上手くいきません。私は猟師経験が7年目になりますが、勢子役(追い立て役)は2年目だからまだまだ先輩たちに習うことだらけです。

見切り(山に入る前に獲物の行動の予測。獲物の種類やサイズ。どの山に入っていったかなどをこの段階である程度絞る)

ヌタバ(猪が泥浴びをした場所)新しい跡であればまだ近くに猪のいる可能性がある

---捕った獲物はどうするんですか

基本的に食べます。人間の食べきれない部分食べても大丈夫な部位を犬の餌などにもしています。有害鳥獣駆除で捕獲されたカラスも他の猟師は全く食べませんが、調理方法を工夫して頑張って食べていました。しかしそれにも限界があるのでカラス除けのために必要な農家にお渡しすることもあります。しかし、駆除対象の土中埋設が行われることも事実です。土中埋設は違法ではないですが、命を無駄にしないという観点からするとあまり好ましくないと思っています。猟師は殺すことが好きと思われることにも繋がりかねないのでそれは避けたいです。なので、基本的には食べるようにしています。

丸1日かけてオスの鹿をメンバーが仕留めた。

---せっかく頂いた命ですから美味しくいただきたいですね。牧さんが猟師にとって必要だなと思うことは何ですか

やはり命を無駄にはしないこと。狩猟は命をいただく行為ですので頂いた命を無駄にすることは出来る限り避けたいと思います。狩猟と有害鳥獣駆除は明確に目的が異なるものですが、猟師のできる社会貢献という観点からも有害鳥獣駆除は必要だと思いますし、そのためにもそのような気持ちは必要だと思います。

体重50kgほどのオス鹿。立派な角を生やしている。

捕獲した鹿はその日の内にメンバーで解体され肉をみんなで振り分けられた。

---猟師になってよかった事はありますか

父や猟師仲間との会話が今まで以上に増えた事は嬉しいですね。あと、やはり食。食事のありがたみを強く実感するようになりました。スーパーなどに売っている肉も私たちが獲った肉と同じ肉です。腐らせて捨てるような事は絶対にしたくありません。

---やはり、食への関心が高いですねでは猟師になって大変だった事はありますか

肉を食べる事はとても大変で難しいと思えました。それを含めてありがたみを感じています。あと、最近狩猟がブームみたいになっているのが少し気になります。ブームで過ごすよりも本気でやりたい人にやってもらいたいです。狩猟は漁業や農業などと同じように人間が生きていくために同じく昔からあるもの。その歴史を廃らせたくはありません。

---それでは最後に牧さんにとって猟師とは

自分の生き方の一部です。魚釣りをしたり素潜りで魚を獲ったりもするし家庭菜園もする。全部含めて自分の生き方の一つだと思っています。

---牧さんありがとうございました。

 取材当日は丸一日捕獲から解体処理するところまで取材させいていただきました。たった1日ですが猟師と共に行動し、いかに獣害が深刻なのかそして対策が重要なのか実感する事ができました。確かにハードな1日で山を何度も行ったり来たり。しかし、狩猟という本来生活の糧であったものを後継者不足でこのまま廃らせていいものか・・・そう感じさせられる1日でした。

 現在、狩猟に関するイベントなどが全国各地で行われています。興味のある方は各イベント主催者またはお住いの地域の猟友会にお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

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