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タツノオトシゴハウス 加藤 紳さんにインタビューしてみた

2015年03月10日 17:33 by masataka_mano
2015年03月10日 17:33 by masataka_mano

 鹿児島県南九州市頴娃町。目の前には大海原を望み天候が良ければ屋久島まで見えてしまうという最高のロケーション。かの有名な伊能忠敬が「絶景!」と称賛した土地でもある。そんな海に囲まれた土地で日本では唯一のタツノオトシゴを専門に研究・繁殖するタツノオトシゴハウスという施設がある。今回はタツノオトシゴハウス代表 加藤紳(かとう しん)さんにインタビューしてみた。

シーホースウェイズ株式会社 代表取締役・繁殖家 加藤 紳さん 

---タツノオトシゴとはよく名前や映像は見る機会は多いのですがいざ本物を見たことはほとんどありません。タツノオトシゴとは一体なんなのでしょうか

タツノオトシゴという生き物はヨウジウオ科タツノオトシゴ属の魚で現在約50種類が発見されています。魚としては珍しく尾びれがないんです。過去にヨウジウオの頃には尾びれがあったんですが、泳ぎ回る必要がなくなったため退化したんです。現存する魚類の中では比較的古い種類となります。

---尾びれがない魚もいるんですね。そんなタツノオトシゴはどんな生態をしてるんですか

よく知られている面白い生態としてはオスが赤ちゃんを産む事でしょうか。これは、オスの体内でメスから預かった卵が孵化し体外に放出するのでオスが赤ちゃんを産むと言われます。オスにとって卵を独占し、メスにとって卵をしっかり保護してもらうというお互いにメリットがあるんですね。あと、タツノオトシゴは基本待ち伏せ型。擬態などをして身を守り尻尾で海藻などに巻きつき流されないようにしています。なので、尾びれが不要になったんですね。逃げることはさほど考えていない進化を選んだ生物です。そのほかにも体内に通る骨の他に外骨格という硬い体でも身を守ります。ほとんどが硬い部分のため食べたところで大したタンパク源にはなりません。捕食者も好んでは食べないようです。

タツノオトシゴの交尾シーンメスがオスの腹部にある育児嚢に輸卵管を挿入し産卵する。

 ---硬くて食べにくいし食べたところでさほど栄養にならないのであればほとんど外敵はいないんですか

自然界の外敵はそう多くはないでしょう。しかし、タツノオトシゴにとって脅威となるのは我々人間です。東南アジアなどの国々ではタツノオトシゴを漢方薬として使用するので乱獲が多かったんです。現在はワシントン条約で2002年に付属書II(輸出入に許可証が必要というレベル)に掲載されてしまっています。

タツノオトシゴの他にカクレクマノミやサカサクラゲの繁殖も手がける。

---なるほど、現在はワシントン条約の対象なんですね。タツノオトシゴって飼育は可能なのでしょうか

 タツノオトシゴは以前飼育が難しいとされていました。しかし、現在は我々のような繁殖を行う方が増え比較的飼育しやすい個体が増えてきたと思います。必要な設備さえ揃えれば問題なく飼育できると言えるでしょう。しかし、一般的な熱帯魚や海水魚とは違い、環境変化のストレスに弱かったり餌の喰いもそれほどいいわけではありません。どちらかというとデリケートな部類に入ると思います。なので、飼育される場合はブリード個体がオススメです。寿命は長い個体で8年ほどでしょうか。我々の手元では6年が最高です。

 

---タツノオトシゴって姿も含め面白いですね。そんなタツノオトシゴに人生を賭ける加藤さん。加藤さんが設立したタツノオトシゴハウスとは一体なんでしょうか 

シーホースウェイズ株式会社が運営するタツノオトシゴハウスと言います。日本国内でタツノオトシゴを専門に繁殖する唯一の施設です。主な活動としましてはタツノオトシゴ資源保護の発信やタツノオトシゴの繁殖。あとタツノオトシゴは昔から安産祈願や大漁祈願・航海安全のおまもりとして持たれることも多く縁起物としてそういったグッズ販売も行っております。元々がレストランの跡地ということと景色が最高な点も含め観光施設という面も持っています。

 

 たくさんのタツノオトシゴグッズも販売

---多岐にわたって活躍されていますね。そんな加藤さん一体なぜタツノオトシゴをお仕事にしようと思われたのでしょうか

私は埼玉の生まれで海なし県育ちです。海のない環境からか水棲生物が大好きで小さな頃からお小遣いを握りしめてはお店に通い熱帯魚などを飼育していました。その後は当然かもしれませんが学校や仕事も水産関連。根っからの海好きです(笑)そんな中、海洋研究のためニュージーランドへ飛びました。そこで調査した海洋保護区にいた大きくて綺麗なタツノオトシゴに心奪われ、そこからタツノオトシゴに興味を持つようになったんです。ちょうどその時が2002年でワシントン条約に掲載された年でした。その事実を知り、繁殖をすれば保護もできるし自分もタツノオトシゴと関わっていけるのではないかと考えました。しかし、国内ではそういった取り組みは行なわれておらず周りから冷ややかな反応を受けたこともあります。でも、僕の専門のテーマの養殖の中にタツノオトシゴが入っていければ儲かるとかそういう話ではなくてやりがいのある挑戦になると思いスタートすることに決めました。

 

---ニュージーランドで出会ったんですね。劇的な出会い。まさに運命の出会いですね。そんなタツノオトシゴへの研究がスタートしたわけですがまずはどういったことを行ったのでしょうか

全くのゼロからのスタートというのは難しいので、まずはタツノオトシゴの養殖の研究が行われているオーストラリアで基礎的な勉強をさせてもらいました。まだ事業ベースではみんなやれてなかったんですけどとりあえず基礎だけでも学びその技術を日本に持ち帰りました。しかし、国内でのプライベートな研究施設などの環境を持ち合わせていなかったため高知大学の大学院で場所を借りて独自に研究を行いました。当時は私自身エネルギーに満ちてて家族の理解も得られなんとか手探りではありますが不安材料のある中研究を重ねていきました。

 

---最初は高知を拠点にされていたとのことですが、現在の鹿児島県にはどういった経緯で来られたんですか

現在ここにいるのもタツノオトシゴを追いかけてなんです。高知県ももちろんいい環境だったのですが、鹿児島県は特に温かい海が目の前に広がっていてタツノオトシゴの種類が豊富で繁殖にも向いているんです。現在、タツノオトシゴハウスを構えている建物も元はレストランで地元観光協会会長からのご紹介で7年前こちらでタツノオトシゴハウスを開きました。そしてなにより鹿児島県の形をひっくり返してもらうとタツノオトシゴの形なんです。これは大きいですよ(笑)

加藤さんから頂いた名刺には鹿児島県をひっくり返したタツノオトシゴのイラストが。もう鹿児島県はタツノオトシゴにしか見えない。

---本当ですね、タツノオトシゴだ。ご縁もですがまさか土地の形までタツノオトシゴだったとはこれはもう運命としか言いようがありませんね。タツノオトシゴハウス今後はどういう展開をしていくのでしょうか

生産数も年間約1万匹へ増やし今後は野生種の代わりに漢方薬としての生産も目指しています。そして、ご縁のあった鹿児島県頴娃町への町おこしなどでの恩返しですね。その他にも埼玉県から移住した当初、子供は海で遊ぶのが当然と思っていました。でも、実際は子供だけで海に行くのは禁止されています。地元の子供たちでも海は少し遠い存在になってしまっています。そんな子供たちにタツノオトシゴを通して海のことを知ってもらい海ともっと身近になって欲しいですね。そのお手伝いができればと思っています。

たくさんのタツノオトシゴが繁殖されている。

---今後もタツノオトシゴハウスの活動に注目度が増しそうですね。最後に加藤さんの思うタツノオトシゴの魅力とは

タツノオトシゴは実際に見る機会は多くないと思いますが、それでもみんな姿や存在は知っています。誰からも好かれる生き物なんですね。タツノオトシゴは非常に平和的な生物で強弱関係を持つ他の動物とは少し変わった面を持っています。大きくて強いオスが子孫繁栄できるわけではなく全て対等です。強いものが栄えるという動物界の常識からすると逆に非常識。特殊な例です。そんな、タツノオトシゴの平和主義者のところが一番の魅力だと思います。

 

---私自身もタツノオトシゴはほとんど見たことがありませんがこうも大量のタツノオトシゴがプカプカ泳ぐ姿を見ているとなんとも心癒されていきます。私たち人間も彼らのような余裕を持って生活していきたいですね。今後のタツノオトシゴ会に注目しています。ありがとうございました。

 

 海沿いに立ち開聞岳を一望できるタツノオトシゴハウス。この素晴らしい環境でタツノオトシゴと共に過ごすのもいいかもしれない。

----------お店情報----------

シーホースウェイズ株式会社・タツノオトシゴハウス

〒891-0704

鹿児島県南九州市頴娃町別府5202-2

電話番号 0993-38-1883

ホームページ http://www.seahorseways.com/index.html

営業時間 10時〜16時

定休日毎週火曜(祝日を除く)

駐車場 あり

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